M's Bar/男の書斎・別室

ルーテシア ルノー・スポール試乗

 役者の揃ったホットハッチシーンの中で、ミニはイギリス車というよりもドイツBMWのFFバージョン展開という感じがしてしまう。一方、イタリアのアバルトはやんちゃな魅力があるし、フランス・ルノーもゴルディーニの日本販売はまだされていないが、ルーテシア(本国名クリオ)スポールの評判が自動車メディアでたいそう高い。

 という訳で、早速試乗に馳せ参じた。いったいどうなのよ、ルノースポール!

 車格はホンダ・フィットとたいして変わらない。3ナンバーだが、コンパクトなクルマといって差し支えないだろう。そこに2リッターのNAエンジンを搭載する。排気量を1.4リッターくらいにミニマライズしてターボチャージャーと組み合わせて、という手法をこのフランス車は採用していない。

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 面構えがいい。外観は黒のフロントフェンダー部分がデザインのアイキャッチとなって、高性能な走りを予感させる。お尻の方はマフラーが両出しで、ディフューザーが据え付けられている。見た目重視の単なるアクセサリーということではなく、130Km/hで40kgのダウンフォースを発生させるのだという。

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 いざ乗り込む。雑誌での記載の通り、やや高めのアイポジションであるが、ふだんフィットに乗る私としては違和感はない。シートの座り心地はやや硬めで、シートサイドが内側に湾曲して体のホールディングがよさそう。リアシートは、取り外しができる。シートをめくると中の臓物がお目見えする。このあたりは外国車特有の合理性だろう。大人でも座れないことはない。そもそも大家族でわざわざ3ドアハッチバックを購入する人はいないし、2+2ほど不便でもないのだから、仮に家族4人だったら充分対応できる。
 
 メーターは、スピード計とタコメーターがシンプルに設えてある。意外にパネルには傾斜がかけられている。インパネはチープなのだが、国産車のプラスチッキーな印象と違って、どう言ったらよいか、どこか懐かしさを覚えて安心するようなチープさで、そこいらがフランス車らしさなのだろうか。

 エンジンをかけてギアを1速へ送り込む。始動時にアクセル量を少し多めに与えてやらないとエンストしそうになるが、トルクは充分。この1速の守備範囲は広いようで、街中だと1速と2速だけで充分そうだ。1速を引っ張ってやると、すぐに60km/hほどに達する。タコメーターが4000から5000rpmへと至るとエンジンサウンドはより気合いが入る。どんどん速度を上げたくなるから、このクルマのオーナーは免許がいくつあっても足らないかもしれない。だから普段使いをしながらサーキットへ向かう人もたくさんいるとディーラー氏から訊いた。実際確かに足が硬すぎることはないから、タウンユースを犠牲にはしていない。こういう日本車は少ないように思う。

 一番驚きだったのは、フランス車を操ったことがないからだろうが、ステアリングが重かったこと。ルノーを乗り継いでいると、今回のルーテシアスポールのハンドルは随分軽くなったと感じるらしいが、私には重かった。直進性を高めるためか。なんでもフランスは市街を一歩出るとすぐに高速道路があって、そういう道路網スタイルとのこと。いずれにせよ以前乗っていたオペルアストラ(96年式)のものより数段重い。ルノー車はどれも似たようなものとの説明(ちなみに新カングーのそれはルーテシアスポールよりもよっぽど重いとも)。主婦が手軽に運転するというには似つかわしくない。

 加えてギアはニュートラル時にシフトレバーが左右にグニャグニャしない。私はつい癖で左右にシフトを振ってニュートラルを確かめてしまうが、これができない。どこのメーカーのギアボックスなのか知らないのだが、個人的には国産車のギアの方がいいように思う。

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 さて果たしてこれはロードゴーイング・スポーツカーなのだろうか?

 答えはイエスだ。フロントのブレーキにはブレンボが奢られ、フロントフェンダーにはエアアウトレットも組み込まれる。そしてリアディフューザーに、複雑なフロントサスと299万円という価格はバーゲンプライスというのも頷ける。ルノーF1チームのファクトリーとして有名なフランス北部のディエップ工場で生産されているとくればその筋が好きなマニアにはたまらない、となる

 では私は買いたいかと考えると、イエスとノーの中間くらいか。《ロードゴーイング・スポーツ》という括りでいけば、誰でも体感しやすい「うおー!すげえ」という非日常性はロータスエリーゼを運転した時の方がはるかに上だった。圧倒的で有無を言わさぬ訴求とは違う。もう少し大人びたアピールをしてくる。だけれど、それは都会的で洒脱というよりも、どこか少し田舎びた素朴さみたいな印象があった(決して悪い意味でなく)。

 ルノーらしさといわれる接地感やコーナーでの脚の粘りなんかは分からなかったが、少なくともクルマを操る楽しみを追求して開発されていることは実感できた。何と言ってもエンジンの吹け上がりが愉快だった。いずれこうした《ファン・トゥ・ドライブを追い求めた、手触り感のある》クルマの存在がなくなっていってしまうような、妙な焦りを感じる。
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by itsunire4311 | 2010-01-24 00:00 | CAR